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馬頭町川崎町長への手紙
4.農業について
馬頭町の産業基盤としての農業は、観光ほど簡単にはいかないでしょう。日本の農業の置かれた状況を越えて活性化することは不可能だからです。しかし、現状を維持しながら、今よりも少し良い状況に持っていくことができるように思われます。
馬頭町の農業を、今よりも‘少し良い’状況にするためのキーワードは、「自給自足」です。馬頭町での農産物の自給自足を目指します。馬頭町に住んでいる人は、なるべく馬頭町の農産物を購入してもらうようにします。それには、3つの条件が必要です。
ひとつは、多品種少量生産です。他の町で作ったものを購入しないでもすむようにするには、なるべく多くのものを馬頭町で生産する必要があります。これは生産面での条件ということになります。
二つ目は、農産物の流通経路の確保です。馬頭町で作成した農産物を馬頭町の人が購入できる状況を作らなくてはなりません。ヒントは、久那瀬の農産物直売所にあります(これについては、後ほどもう一度ふれます)。
三番目は、消費者の意識改革です。消費者すなわち町民の大部分は生産者でもあるでしょう。お互いに共生するという意識が無いと自給自足は成立しません。農産物の自給自足の意義(安全性の問題や、環境の問題、地域経済の問題など)を周知する必要があります。町が主導して、研究会や講習会をすることが、意識改革に結びついていくと思います。
5.農産物の生産者直売の町へ
馬頭町の農業は、長期的には自給自足を目指すにしても、時間がかかるでしょう。生産者であり消費者でもある町民の意識が改革し、「農産物自給自足の町=馬頭町」として有名になれればすばらしいと思いますが、一朝一夕にはいきません。
そこで、とりあえずのテーマとして、観光客相手に「農産物の生産者直売の町」を目指します。幸いにして、久那瀬の農産物直売所は、モデルケースとして有名になりました。道の駅などに押されて、以前のような勢いが感じられませんが、もう一度原点に返ることによって、大きな力に結びつけることができると思います。
最近、各地に増えている「道の駅」の農産物直売所と久那瀬の農産物直売所の違いは、「バザール(=市場)」であるかどうか、だと思います。冷暖房の完備したアルミサッシの内側に販売所を設ける(「伽藍とバザール」という用語での「伽藍」にあたります)のではなく、土間の上にパレットを置いてその上に品物を並べるやりかたです(こちらが「バザール」です)。品物の並べ方は、規則性が無くて良いのです。規則性がない方が、発見のおもしろさがあります。そのあたりが、久那瀬の農産物直売所の原点だと思います。
このような考え方で、農産物直売所を増やしていきます。このようなスタイルの販売所は展示物に規則性がないのですから、規模を小さくする必要があります。大きな規模では、一部しか見ることができないからです。全体を見渡せる程度の小さな規模の販売所を数多く設置します。街道沿いに直売所が点在すれば、観光客にアピールすることができるでしょう。 時間をかけて、このような小さなバザールを増やしていくことで、町全体をひとつの大きなバザールにすることができるのではないでしょうか。
最近は「買い物ツアー」も結構な盛り上がりをみせています。港町に立ち寄って魚介類を購入するためのものが多いようですが、農産物や山菜、キノコなどでも十分対応できます。「広重美術館を見て産地直売の野菜を買って帰る」という観光を「美しい心のふるさと」で提供できるのです。
前項の、自給自足の農業に戻りますが、このような拠点を農産物の流通の経路として育てていくことによって、一歩ずつ大きな目標に近づいていくことができると思います。街道沿いで野菜を買うのが当たり前になれば、生産者側でも、自然と、品目を工夫するようになるでしょう。だんだんと多品種少量生産に移行していきます。
街道沿いに畑を作っている人は、自分で直接販売する人も出てくるでしょう。その場合は、無人の縁台でも可能です。もしも畑作業をしているときなら、消費者と直接会話することができます。生産者が直接消費者に販売する「古くて新しい形の農業」を、そこに期待することができます。消費者の側にとっては、生産の現場を見て農産物を購入するおもしろさがあります。食の安全性に対する生産者と消費者の溝も埋まるように思います。ここに、価格競争とは無縁の農業として、ひとつの産業を確立できるように思われます。
このような流通経路の確保には、町の補助が必要でしょう。しかし、多くの金額は必要ありません。町民の意識を醸成して、ほんのきっかけを提供すればすみます。頭を切り換えられるかどうかだと思います。
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